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田中「20年前、僕らの世代が初めて海外のアーティストのライブを観るためには、5年も6年も待たなきゃいけなかった。大好きなレコードは3年前のレコードで、最新作はあんまり好きではない、でも遂にロッド・スチュワートがやって来る、5年間ずっと想像を膨らましていたロッド・スチュワートが、もしかしたらカッコ悪くなっているかもしれないけど来日する、ポール・マッカートニーがウィングスとして遂に初来日する——それは何がなんでも行くよね。それと以前は、それぞれのソロ・コンサートが入り口だったけど、今だとやっぱりフェスティバルがいろんなものの入り口だよね。ライブハウスやホールでのライブが原体験っていう人は少ない。16歳で初めて『SUMMER SONIC』や『ROCK IN JAPAN』に行ったっていう人が多いでしょう。そこでの体験が原体験になっているジェネレーションが、ここ5、6年で確実に増えている。で、洋楽フェスが原体験になってる人と邦楽フェスを原体験に持ってる人では、明らかにトライブが違ってくるよね」
後藤「なるほど」
田中「そうなると、まったく海外の音楽に興味のない人たちが出てきてもおかしくない。良い/悪いじゃなくてね。20年前に比べれば、日本のアーティストの数は100倍になり、クオリティは間違いなく格段に上がった。そうした状況下で、自分たちのリアリティにそぐわない、よくわからない海外の言葉で歌っている音楽をわざわざ聴こうとするモチベーションっていうのは、その世代には生まれないと思う。うん、だから、そういった、諸々のいろいろなことが重なっているんだと思う」
後藤「そうですね、流れとしては。難しいなと思うんですよ、若い子を捕まえて“洋楽を聴け”っていうのは。別に聴かなきゃいけない必要はないし」
田中「ないない(笑)」
(中略)
田中「ところが、YouTubeで何でも聴けるようになったせいで、誰も何も聴かなくなった。自分がもともと好きなアーティストの新しい曲は聴く、そこから繋がりのあるものを聴いたりはする、でも、それでお腹一杯になっちゃって、知らないものをわざわざ聴いてみようとは思わなくなった。その結果として、20年前に比べて、Amazonも含めて、バックカタログが本当に手に入らなくなった。例えば、僕が高校生のころ、30年前はヴェルベット・アンダーグラウンドのアルバムを手に入れるのはすごく大変だった。ところが、90年代初頭になるとTOWER RECORDSやHMVができはじめて、CDで全て手に入るようになった。映画監督でもあり、ビースティ・ボーイズのデザインもしているマイク・ミルズが、『TOWER RECORDSは、僕らの世代にとってのMoMAなんだ』と言っていたんだけど、そういう状況が20年前に出来上がった。ところが、それがYouTubeの登場によって、パッケージとして流通される必要がなくなってしまった。そうなると、パッケージとしてヴェルベット・アンダーグラウンドのアルバムを誰も手に入れられなくなるっていうおかしなことになったんだよね。YouTubeでは聴くことは出来るけど、ヴェルベット・アンダーグラウンドを聴くためにYouTubeを検索する人は本当に少ないと思う。すぐに聴けたりするものを誰もが欲しがることは、まずないんだよね。だから、“ストリーミングできます”、“ダウンロードできます”っていうのもそれと同じだと思うんだけど」
後藤「それは興味深いし、考えていかなきゃいけないですよね。実際に実験して欲しいと僕は思ったりもするんですけどね」